インターン・リポート
更新日:2022年1月10日
昨年の9月6日から17日まで、筑波大学3年生の須永真弓さんが、全国町並み保存連盟事務局でインターン研修を行った。同大学・藤川昌樹教授からの紹介だ。事務所での作業のほか(このホームページが少しよくなっているのは彼女のおかげです)、関東の町並みをまわってもらった。このほどそのリポートをいただいたので掲載します(写真は本人撮影)。*リポートは10月にいただきました。掲載が大変遅れたことをお詫びします。
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町並み保存連盟にてインターンをさせていただいた、筑波大学の須永真弓です。インターン中は事務所での作業のほかに、関東の団体様のところへ訪問させていただきました。受け入れてくださった佐原、栃木、川越、桐生の皆様に厚く感謝申し上げます。体験記として少し述べさせていただきます。
―佐原―
「小野川と佐原の町並みを考える会」の会長である佐藤さんと、同会のメンバーであり今年8月から香取市の地域おこし協力隊として働いている現役大学院生の岡田さんに町を紹介していただきました。
佐原でのテーマは「地域住民と観光客の交わり」だったように思います。まずは、岡田さんの紹介で「ホステルコエド佐原」を訪れました。倉庫だった小屋をきれいな木造風の家にリノベーションした民泊です。施設の共有部分には地域住民が気軽に顔を出せるスペースがあり、宿泊客と地域住民の交流が生まれやすくなっています。オーナーの柳瀬さんは非常にアクティブな方で、お時間のある際には観光案内をしてくださるそうです。
もう一つ取り上げる場所は「さわら町家館」です。軽食や雑貨の販売店やレンタル浴衣店が入っています。建物を抜けた中庭と2階は休憩スペースになっていて誰でも立ち寄ることができます。
町なかにこういった地域住民と観光客が交わることのできる空間があるということは非常に重要であると感じます。地域住民と観光客、どちらにとっても心地よい町であるためには両者の交流が必要なのではないでしょうか。しかし、コロナの影響もあると思われますが、訪問時にはスペースの利用者はあまり見かけませんでした。場所の整備が整っているだけに、活気のある場所になったら素敵だなと思います。
―栃木―
「栃木蔵街暖簾会」の殿塚さんに案内していただきました。建物1つ1つの詳しい説明に加えて、重伝建地区や重要文化財を登録する際の経緯なども教えてくださいました。昔はこの川で遊んでいた、ここには市場があった、など昔から栃木の町に住み続けているからこそのお話も伺いました。
何よりも殿塚さんのまちづくりに対する強いこだわりが伝わってきました。「1日だけ数万人訪れる町ではなく、毎日1000人が訪れる町」を目指したいとおっしゃっており、そこには明確な目標がありました。まちづくりをするうえで、とりあえず流行りのことをやってみるという風潮は各地で見受けられます。しかし、それだけで本当に良い影響を与えることができるのでしょうか。きちんとしたエビデンスに基づき、その町に合ったモデルを検討するからこそ目標へ近づく効果が期待できるのだということにお話を聞いていて改めて気づきました。授業などで様々な事例に触れますが、成功したからといってその手法がどこの町でも当てはまるわけではないということを強く念頭に置こうと思います。貴重な気づきを
得ることができました。
―川越―
「川越蔵の会」の荒牧さんに案内していただきました。午前中は川越駅から商店街中心までを歩き、午後は喜多町弁天長屋にて個展の店番を体験させていただきました。
開発が進んだ駅周辺の現代的なまちから伝建地区の歴史的なまちまで、都市の変遷を見ることができました。町並みを守るための制度や活動など、ただ歩いて見るだけではわからないことを本当にたくさん教えていただきました。
川越のまちづくりの特徴はまちが主体であるということです。まちなみ委員会の中心がまちに置かれていることにより、一貫してぶれないまちづくりができているのだと感じました。
今回川越を訪問させていただいて強く印象に残ったことは「皆さんの温かい人柄」です。特に店番をしている時は次から次へと人が訪れて、たくさんの方とお話しすることができました。皆さん本当に優しく、面白い方たちで楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいました。これほど暖かいまちが現代にもあることをとても嬉しく思います。私は現在アパートで独り暮らしをしておりますが、隣人と話したことはありません。現代は近所付き合いが希薄だと言われている中で、商店街では住民同士の濃密な付き合いがありとても魅力的だと感じます。何よりも皆さんが川越のことが好きだという気持ちがとても伝わってきました。自分の住む町を好きだと思えることはとても素敵なことです。当たり前のように感じますが、心からそう言える人は決して多くないのではないでしょうか。
―桐生―
「本一・本二まちづくりの会」の森さん、中村さんに説明していただきました。桐生の町が歴史的景観を活かしたまちづくりをするに至るまでの経緯や、最近の動きまでたくさんのことを教えていただきました。長く桐生の町に関わっているお二人ならではのお話です。
お二人の話で特に印象的だったことは、東日本大震災がきっかけで住民同士のつながりが深くなったということです。地元の建築士会の方々が崩れてしまった建物を無料で調べ、修理の相談やアドバイスをしてくれたとおっしゃっていました。そこから人同士の付き合いが深まり、昔からある思い出深い建物を守りたいという想いが広く伝播していったといいます。震災というと負の印象が強いですが、それをきっかけに町が良い方向へ変わっていったということは素敵なことだと思います。
「桐生のまちづくりはまだまだこれから」とお二人が仰っていました。私も群馬県出身者としてこれからの動きに注目していきたいです。
10日間という短い間で、これほどまでに貴重な体験をさせていただき本当にありがとうございました。皆様からの期待の言葉を胸に、これから研究をしていきたいと思います。
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