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  • 福川裕一

川越『町づくり規範』35年ぶりの改定版が完成

更新日:2023年5月22日



 『町づくり規範』は、町並み委員会が新改増築などの町づくりに関する行為を審査するにあたり、規準としてきた町づくりの原則(パタン)集。1986年の「川越一番街まちづくり規範に関する協定書」に基づき、1987年4月10日に発足した町並み委員会が、1年後の1988年4月1日に67のパタンを集めた「まちづくり規範」を定め、運用してきた。2017年11月の町並み委員会30周年記念式典の折り、「そろそろアップデートを」という声があがり、作業が続けられてきた。

 根拠となった「川越一番街まちづくり規範に関する協定書」は、もともとは川越一番街商業協同組合が1985年度に取り組んだ「川越一番街商店街活性化モデル事業(通称、コミュニティマート事業)」で立案された計画にもとづき、組合員たちが締結したものである。その後、1999年、一番街とその周辺は重要伝統的建造物群保存地区に選定された。そこで、町並み委員会は、2009年の重伝建地区選定10周年の折に、商店街および周辺4自治会と新たな協定を結び、重伝建地区を対象範囲とする重伝建地区住民協議会に位置付けを変え、名称も「川越町並み委員会」へ改めた。2015年には、都市景観条例にもとづく都市景観推進団体の指定を受けた。今回の改訂では、『町づくり規範』の内容だけでなく、これら経過をふまえ協定書等の整理も行われた。表紙は次のように変わった。

網かけの部分が商店街の範囲、青枠が重伝建地区

 改訂作業は、町並み委員会のもとに「規範改訂部会」を設けて開始された。2018年8月30日にキックオフ・ミーティング「地元の皆さんとの意見交換会」を開催。その後しばらくは試行錯誤が続いたが、2019年初秋に、①オリジナルの「町づくり規範」はそのままアップデートする、②あわせてコンパクトなエッセンス版を作成する、という基本方針が固まり、作業が本格化。①については2020年末にほぼ成案を得、協定書等の整理もつき、関係四自治会、商店街の承認を得るプロセスに入る予定であった。しかし、コロナ禍に突入。一連のプロセスを経て、ようやく昨年(2022年)7月9日、仕上げの住民説明会に漕ぎつけた。説明会で出された意見を反映し、9月26日の町並み委員会で最終案を決定、さらに推敲を重ね、エッセンス版も完成させ、今年(2023)年4月中旬に印刷所へもちこんだ。着手から印刷まで、足掛け5年に及ぶ改訂作業となった。

キックオフ・ミーティング「地元の皆さんとの意見交換会」

 この間、川越一番街は、オーバーツーリズムから一転コロナ禍で閑古鳥が鳴く事態へ。まちづくりに尽力された前町並み委員会委員長・可児一男さんの逝去(2019.2)、重伝建地区選定20周年(2019.12)、第43回全国町並みゼミ・川越大会(2020.1-2)、最古の町家・水村家住宅取り壊し(2020.7)、唯一の江戸芝居小屋の遺構・鶴川座取り壊し(2020.8)、蔵の会が改修を手がけた喜多町弁天長屋のグランドオープン(2021.7)などなど、実にさまざまな出来事が相次いだ。


 改訂作業の結果、67のパタンは5つ増え、72パタンとなった。下線が修正または追加されたパタンである。

 最初のパタン「1. 固有な都市・川越」を例に、どのようにアップデートしたか見てみよう。各パタンの1ページ目に、パタンに続いて、写真、課題、結論、スケッチを掲げ、2ページから課題と結論をつなぐ説明を展開するというフォームは変わらない。アップデートの作業では、まず2ページからの説明を検討。オリジナルの部分は温存した上で、①その後の経過を整理し、②現時点でのデータ(ここでは川越の性格を規定する諸計画)を収集・検討し、③このパタンをどうするか結論を導く。ここでは「1. 固有な都市・川越」の実現にはまだまだ多くの課題があり、このパタンを基本的に維持していく。ただし「固有な」の内容をより具体的に表現するため、タイトルを「1..歴史都市・川越」に改める、という結論を導いている。

 このような作業の結果、削除するパタンはなく、タイトルを修正するもの、新たに追加するものがそれぞれ5パタンとなった。理由別に並べると以下のようになる:


 伝建地区が背後の住宅地を含むようになったことへの対応

 変更:7. 近隣単位としての一番街 →7. 近隣単位としての自治会

 追加:→22.1 前庭付き仕舞た屋

 追加:→38.1 いえ・にわ型住宅


 商業環境の変化への対応

 変更:26. 個人商店が集まって商店街をつくる →26. 沢山の魅力的な店で商店街をつくる

 変更:39. 基本としての個人商店 →ライフスタイルを商う


 オリジナルの規範では不十分だった項目の追加

 追加:→59.1 パブリックからプライベートへ、間取りを順序よく組み立てる

 追加:→59.2 通りと会話する窓

 追加:→65.1 神は細部に宿る


 より適切な表現へ

 変更:1. 固有な都市・川越 → 1. 歴史都市・川越

 変更:18. 回遊路(プロムナード) →18. プロムナード

 変更:30. 子ども領域を確保する →30. 子どもが闊歩できる街


 修正作業の中でも、悩ましかったのは交通の問題。一番街の通りは、今なお市街地を南北に貫通する幹線で、通りには人と車が輻輳している(最近は人間の方が車を圧倒する時もある)。この問題に関するパタンは「14. 主要な通りを生活の場にとりもどす」で、旧版では《自動車をスムースに流すため、また歩行者空間を確保するため、主要分散路の一方通行化をすすめる。当面は時限的に実施し、適切な外郭環状道路完成後、本格的に実行する》という結論を示していたが、実現には至っていない。修正では、これまで幾度となく試みられた社会実験を振り替えつつ、住民も賛否に分かれる現状を踏まえ、「一方通行化を進める」以下を次のように改めた:《一方通行化にあたっては、住民側にどのようなメリットがあるかをよく確認し、実施する時間や範囲について、交通シミュレーションなどを駆使しながら、納得がいくまで検討する。》

 協定書等の整理では、2009年に、元町一丁目、元町二丁目、幸町、仲町の四自治会および一番街商業協同組合(甲)と町並み委員会(乙)が結んだ「川越市伝統的建造物群保存地区の住民等による保存団体に関する協定書」を補強、「第6 町づくり規範の尊重:(1)甲及び乙は、「町づくり規範」(町並み委員会作成)を尊重し、伝建地区のまちづくりに生かしていくものとする」のあとに「(2)「町づくり規範」は、川越一番街・町づくり規範に関する協定書(昭和62年4月24日発効)に従って、乙が作成・改正・運用する。なお、町づくり規範に関する協定書の「一番街」は「川越市川越伝統的建造物群保存地区」に、「町並み委員会」は「川越町並み委員会」へ、必要に応じて読み替えるものとする。」を追加、当初の「町づくり規範に関する協定書」が活かされるようにした。これはオリジナルの協定書を大切にしたいというだけでなく、重要な「町づくりの目標」と「町づくり規範の基本原則」が盛り込まれているからである。改訂版の『町づくり規範』では「1. 歴史都市・川越」の前に、0番としてこの基本目標と基本原則を特出しした。


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 現在、一番街には観光客がもどり、再びオーバーツーリズムへの懸念が人々の口にのぼるようになった。改訂版の作業をリードしてきた原知之・川越町並み委員会委員長は、「はじめに:町づくり規範について」で、「川越町並み委員会は、これからも、「自分たちの町は、自分たちで守り、創っていく」という気持ちを伝建地区の皆様と共有し、より良い町づくりを目指していく所存です。」と決意を新たにした。

 『町づくり規範』本編と「エッセンス版2023」は、6月以降川越一番街なかほどの太陽堂書店に並ぶ予定だ。同書店は郷土に関する本の充実で知られる老舗である。


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