• 落合康信

川越・喜多町弁天長屋がグランドオープン、広く資金支援を募りセルフビルドで再生・活用

更新日:7月29日



全国町並み保存連盟の皆様、日頃より大変お世話になっております。

 NPO法人川越蔵の会です。

 この度当会の事業として、町に残る古き良き「長屋」を修繕し、それを活用・継承させるための活動を行いました。連盟の皆様にもこの事業に対しては格別のご理解とご協力を賜りました。誠にありがとうございました。

 この長屋は現在の町名および地名に倣い、「喜多町弁天長屋」と称します。今回はそのご報告をさせていただきます。


 建物は明治26年の川越大火後に建てられたもので、明治35年の書籍に載っている埼玉縣重要物産陳列所であった可能性が高いと推定されています。その後、昭和の時代には大きく増築され、いくつかの飲食店を経ましたが、現在は空き家となっていました。四軒長屋ながら増築の関係で、当会が事業として計画していた二軒分でも面積が180㎡以上と規模が大きく、なかなか借り手もつかない状況でした。



 当会ではかねてより、独特な情緒あふれるこの横丁を活性化したいとの思いを持っておりました。2014年にはこの喜多町弁天長屋の南東に位置する「麻利弁天長屋」と呼ばれる七軒長屋の一角をお借りし、セルフビルドでリフォームを行い、ギャラリー兼アーティストの住まいとして新たにオープンしました。それ以降、次第に入居者やお店も増えてきたのを見て、更にこの横丁を活性化させようと動き始めました。

 この喜多町弁天長屋の再生事業は、大家さんのご理解を得て当会が建物を借り受け、サブリースするという方法を取り、複数の入居者でシェアする形で有効活用を図ることにしました。


 先ずは建物の修繕工事です。かなりの費用が予想され、当会の資金のみではとても間に合わないので、広く多くの皆様から事業資金の支援をお願いすることになりました。2020年の秋より募集を始め、現在までに多くの方々からご支援を賜りました。連盟を通しても多くのご支援を賜り、誠にありがとうございました。


 修繕は2020年の5月、建物を覆っていたブロック塀の解体から始まりました。傷みもあり危険なため、緊急性を要するという理由もありましたが、この解体によって閉鎖的なイメージから、路地に対しての新たな開放感が生まれました。



 その後下屋の瓦屋根を傷めていた増築部分を取り除き、建設当初の形に戻して瓦屋根を修復しました。瓦と下地の傷みがひどく、雨漏りをしていたためその個所を特定し、下地から葺き替えを行いました。



 外装に関しては、基本的には建物の寿命に関わる部分は景観に配慮しつつ、現代的な補修をしてすっきりとした長屋の状態に戻すことを考えました。壁を取り除いた部分は古い建具や漆喰の下がり壁とし、長屋らしさを取り戻しました。また入り口前の犬走り部分にはレンガ敷きも行いました。

 内装に関しては、長年汚れたままになっていた天井や砂壁・繊維壁、床などを部分的に剥がして修復し、二階部分は主に漆喰を塗り、一階部分は県内にある東秩父村の細川紙(ユネスコの無形文化遺産にも登録されている、伝統的な手漉き和紙)などを貼って整えました。床のワックスがけや建具の洗い、ご近所のご厚意でいただいた家具も搬入し、今までとはまるで違う古くも新しい長屋の誕生となりました。



 修繕工事については当会メンバーや業者さんはもちろんですが、多くの部分でボランティアの方々がお手伝いしてくれました。コロナ禍という難しい状況の中、感染対策を取りつつ、多くの方々が「長屋再生」への熱い思いを胸に汗を流してくれました。本当に感謝しかありません。


 そして工事と並行して行われたのが入居者の選定を始めとしたソフト面の準備です。

当会のメンバーを中心に毎週「弁天長屋プロジェクト会議」を開催し、準備を進めてきました。

 喜多町弁天長屋の目指すコンセプトは、「長屋としての生活する人々の繋がりを大切にしたコミュニティーの拠点となること」、そして「川越のアートやものづくりの拠点であり、伝統の技や文化の情報発信の場となること」と位置付けました。

 そうした意義を汲んでいただける方に入居していただきたい。そのための入居者心得を作成し、現地の見学会も行いました。長屋には九つの区画がありますが、会議を重ねながら選考を行い、飲食店を含めた五つの区画に入居者が決まりました。皆若いですが、志を持った素敵な”ものづくり”の方々です。

 現在四つの区画がまだ空いておりますが、その内一階の二つの区画については、川越および周辺で活躍している作家さんや職人さんの作品展示・販売を行うスペースとして、当面は当会が運営することにしました。二階部分の空き区画では現在、弁天横丁の歴史や喜多町弁天長屋の改修過程などを紹介する写真展を開いております。



 入居が決まった飲食店さんのオープンに合わせ、建物内のディスプレイ、リーフレットの作製を終え、この7月9日に「喜多町弁天長屋」はグランドオープンいたしました!

 いまだコロナ禍も落ち着かない状況で大々的なイベントは行えませんでしたが、当日は支援してくださった方々をご招待し、ささやかながらも暖かいオープニングを迎えることができました。


 先に述べたように、建物全ての区画に入居者が決まったわけではありません。本当にまだスタートしたばかりです。しかし近い将来、新たな志を持った方がきっと入ってくれるでしょう。長屋として、そして横丁としての新たなコミュニティーが生まれ、同時に川越のものづくりの文化が新たに発信されていく場となることを確信しています。この長屋と横丁が多くの人々に愛され、そしてその情緒と伝統がこれからも永く受け継がれていくことを願っております。


 最後になりますが、当会のこの事業に関して、全国町並み保存連盟の皆様にはご理解と多くのご支援、ご協力を賜りました。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。

今後も我々は町並みの保存と活性化を目指し、尽力していきたいと思います。今後ともご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

(NPO法人川越蔵の会・代表理事)


*今回の「喜多町弁天長屋」と「弁天横丁」についての詳しいご紹介は、当会のホームページからご覧いただけます。ぜひご覧ください。


〇NPO法人川越蔵の会 URL : www.kuranokai.org/wp/



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