• 福川裕一

町並み保存は「外観保存」ではない:オンライン会議から+北島力さんのレポート「伝建保存修理事業の体制及び活動の検証:八女福島の現場から」

最終更新: 10月11日


このごろの挨拶:「ZOOM会議はもうウンザリ」「ZOOMでできる会議は電話やメールで十分」「シナリオが決まってる会議向けだな」「ああ、やっぱ面と向かってやる会議がいい」。


ごもっともと想像はつくが、全国町並み保存連盟では、オンライン会議はまだ新鮮である。前回、9月10日の運営会議では全国各地から10人の理事が参加した。9月27日の峯山賞選考委員会には、委員全員が顔をあわせて直接意見を交換した(去年まではメール審議だった)。コロナ以前には考えられなかったことである。インターネットは時空を超える。全国に会員が散らばる連盟にとっては、本当にありがたい。そして、何より重要なのは、インフォーマルな会話から、ハッとする「成果」が生まれることだ。そんな中から、9月10日の運営会議のおしまいの頃にに交わされた、倉敷の中村泰典さんと八女の北島力さんのやり取りを紹介しよう。


中村)倉敷では、おみやげもの屋さんが町家の中の壁や床を取り払って、すっかりお店にしてしまっている。外観は保存されているけど、それでいいんかいな。だめでしょう。ほかの地区ではどうされています?

北島)八女でも、空き家を店舗として再生活用する場合が多いです。でも、事業がうまくいかず撤退することも考慮して、住宅に戻せるように修理することを基本としています。基礎、床組、柱と梁及びオリジナルの意匠などは、原則として残し、歴史的建築物としてのクオリティーを維持します。保存と活用のバランスを考慮したこの基本方針は、これからも伝承して守っていかなければならないと思っています。


少し解説を付け加えると、町並み保存が始まったころ、「外観は保存、内部は自由」という言説が専門家の間でも流布していた。『倉敷町並保存調査報告』(昭和49年度)をひもとくと、「建築物の保存・修景の原則と方法」として、次のように書かれている:


次の3段階による方法が適当と判断される:

1. 建設当初の状況に復原するのを原則とするもの

a)内部・外観とも完全に復原するのが適当とするもの


b)道路側からみえる立面のみを復原するのが適当とするもの。この場合、内部は現代生活その他に適応するように自由に改造して良いので、前述のように、平面形式(間取り)は問われない。

2. 復元が不能か困難な場合、代表的な町家をモデルとして改造。道路に面する外観のみが保全改修の対象となる

3. 復元することが不適当な場合、倉敷の伝統的様式に従いながら新しい形式とする


確かに、日本の町並み保存のパイオニア・倉敷でこの方針が文字通りに、40年以上にわたって維持されてきたとすると、中村さんの危惧も、さもありなんと思う。


町並みの保存とは、いったい[何を・なぜ・どのように]保存することなのか? 稲垣栄三先生がこの問を発したのは、1978(昭和53)年の有松・足助の第一回町並みゼミの講演においてであった。この問は、町並み保存のあらゆる領域にわたって投げかけられているが、「町並み保存は外観保存か?」は、町並み保存のコアともいうべき問である。町並み保存にかかわる人々・団体は、この問について、日々自問自答を繰り返してきたと思う。そして、北島さんの答は、実践に根ざした現在の到達点といえよう。


会議の直後、北島さんから「伝建保存修理事業の体制及び活動の検証:八女福島の現場から」というレポートが届いた。そこには、八女の体制の詳しい説明とともに、上記の方針が書き込まれていた。ぜひ、ご確認ください(赤い字をクリックするとダウンロードできます)。


会議では、あらかじめ用意された議題に沿って議事を進めることも必要だが、付随して何気ない会話から思いがけない「成果」が生まれる。オンラインであろうと、リアルであろうと、コミュニケーションの機会を絶やさないことを心がけたい。




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