- 福川裕一
第47回全国町並ゼミ東京大会:「まちなみはみんなのもの」から50年、町並みが未来をひらく
1974年(昭和49)4月17日、「今井町を保存する会」、「妻籠を愛する会」、「有松まちづくりの会」の代表が名古屋・有松に集まって、町並み保存連盟を結成した。今年はそれからちょうど50年。結成50周年を記念する第47回全国町並ゼミを東京で開催する。大会1日目は50周年記念トーク。創立団体、町並みゼミのベテラン、今をときめく町並み活動家がそれぞれの想いを開陳する。
東京での町並みゼミ開催は、第5回(1982)、第21回(1998)に続く3回目である。東京で開催するメリットは、地域固有の課題とはやや距離を置いて、町並み保存そして歴史的環境の保全について普遍的な課題や方向性を俯瞰することができることだ。そこで今回は、いつもの分科会方式をやめ、テーマをしぼり、参加者全体で課題や将来の方向性を共有できる大会にしたい。具体的には、2日目の午前中を[制度]に、午後を[防災]にあてる。保存と活用、観光公害、空き家問題、場所づくり、国際協力、気候変動・・・課題は尽きないが、今回はこのふたつの基本テーマをとりあげよう。
「制度」のセッションの副題は「町並み保存から歴史まちづくりへ」。町並み保存の中核的制度である重要伝統的建造物群保存地区も、来年、制度制定50周年を迎える。大きな成果をあげてきたが、①範囲や対象が限定されがち、②重伝建地区になりきれない歴史都市も少なくないなど、課題も多い。これからより間口の広い、歴史まちづくりのシステムをどう構築するかを考える。
「防災」のセッションの副題は「災害に強い町並みとは? 目指すは回復力」。耐震改修が進まない、そもそもどのような考え方で耐震改修を行うか・・・災害をめぐる議論は尽きない。保存に必要な建築基準法の緩和を受ける場合も、さまざまな防災措置が要求される。防災は「災害に強い町並みとは?」という原点から問う必要がありそうだ。当日は、各地の取り組みを出し合い、論点をあきらかにしたい。
「地域固有の課題とはやや距離を置く」と書いた。しかし東京であっても、東京という地域と無縁でよいわけがない(第5回ゼミの成果のひとつは「東京にも町並みがある」だった)。今回会場となる墨田区京島は、ふたつの基本テーマを考える上で絶好の場所だ。関東大震災後に形成され、長らく対策が必要とされてきた木造密集市街地は、今や100年になろうとする歴史的町並みである。その町並みを評価して、負の遺産と思われていたものを「地域文化を継承する幸せな建物と人」へ変える歴史まちづくりが取り組まれている。その中心を担っている「八島花文化財団」が今回のパートナーである。そこで制度と防災はどうなっているか、私たちの議論を大いに刺激してくれるだろう。
全国町並み保存連盟は、「町並みはみんなのもの」をスローガンに50年間活動してきた。今回のゼミでは、このスローガンを再確認するとともに、タワーマンションではなく町並みこそが、私たちのまちの未来を拓くのだという確信へつなげていきたい。
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第47回全国町並ゼミ東京大会
日時:2024年10月26日(土)〜27日(日)
場所:千葉大学墨田サテライトキャンパス
スケジュール:
[1日目]
10時、10時30分: 八島花まちあるきツアー(京成曳舟駅から会場へ)
13時: 開会式
13時30分: 基調講演①「東京・向島の町並みの歴史」
山本俊哉(明治大学教授、都市計画家協会会長、向島学会理事)
基調講演②「墨田京島における長屋継承の取り組み」
後藤大輝(一般社団法人・八島花文化財団代表理事)
14時30分: 全国町並み保存連盟50周年記念トーク
1. これからもトップランナー:創立三団体の想い
2. 連盟はこれでよいのか:ベテラン三人の提言
3. まちなみは私が守る:町並み活動家三人の決意
聞き手:西村幸夫(國學院大学教授、全国町並み保存連盟理事)
17時 30分 : 峯山富美賞2024年贈呈式
18時 : 交流会(19時30分終了)
[2日目]
9時: セッション1
「制度:町並み保存から歴史まちづくりへ」
進行:福川裕一(全国町並保存連盟理事長、千葉大学名誉教授)
11時15分: ブロック会議・昼食
12時45分: セッション2
「防災:災害に強い町並みとは? 目指すは回復力」
進行:鈴木伸治(横浜国立大学教授)
15時: 閉会式(15時20分終了)
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