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  • 福川裕一

全国町並みゼミ・長野松代・善光寺大会:庭園都市をめざす松代、プレゼミで文化的景観と武家庭園をしっかり学習


 第41回全国町並みゼミ長野松代・善光寺大会が近づいて来た。50周年をめざす次の10年のスタートである。次の10年は、名古屋有松大会で高らかにうたった「町並みは私が守る」の実践が課題だ。その出発点として松代ほどふさわしい場所はない。美しいたたずまいの町では「NPO法人夢空間松代のまちと心を育てる会」を中心に驚くような活発なまちづくりの活動が展開されている。もうひとつの会場・善光寺は、今や若者たちが熱中する「リノベ」のメッカである。私は1981年の町並み調査に参加したが、正直に告白すれば、当時の静かな町からは思いもよらないまちづくりが展開している。「夢空間松代のまちと心を育てる会」は、その活動を評価され、8月に田村明まちづくり賞(自治体学会賞)を受賞した。

 その松代がめざしているのは「庭園都市・まつしろ」である。真田10万石の城下町として知られる松代は、千曲川に面するお城を殿町と呼ばれる武家地が囲み、その外を町人町が、さらにその外を広大な武家地が取り囲む。農地を含む武家屋敷の平均的な規模は800坪と言われ、それぞれが美しい庭園を備えている。松代の大きな特徴は、それらの庭園の池が泉水路でつながっていることである。地元では、このユニークな環境を文化的景観に位置付けられないかと、運動を展開中だ。

 今回のゼミでは、第二分科会「歴史的環境の保存と継承」がこのテーマにとりくむ。日本では、ほかの多くの町並みも、豊かな水環境に恵まれ、それぞれの固有な環境を作り出している。ぜひ課題を共有したい。

 9月3日に開催されたプレゼミも、タイトルは「松代の泉水・泉水路シンポジウム」だった。永井ふみ・文化庁記念物課文化財文部科学技官による「文化庁による重要文化的景観地区指定事例紹介」と佐々木邦博・信州大学農学部教授による「全国から見た泉水・泉水路の貴重性」という2つの講演の後、梅干野成史・信州大学工学部准教授の司会で、私も加わってシンポジウムが行われた。それぞれ1時間強の講演では、文化景観と松代武家屋敷の庭園の特徴について、じっくり学ぶことができた。とくに、庭園史が専門の佐々木先生には、武家屋敷の庭園に、泉水路をもつ松代武家屋敷の庭園を位置付けていただき、その特徴をとてもよく理解することができた。見学も組み合わされる本番のゼミが楽しみになってきた。

 「庭園都市」は、前述の伝統的建造物群保存対策調査の報告書のタイトルである。当時、東京大学都市工学科大谷研究室でこの調査のリーダーをつとめた西村幸夫・神戸芸術工科大学教授がゼミの基調講演を行う。松代では、その後いくつかの調査が行われ、市民活動が展開され、泉水路を含む環境の整備が進められて来た。それらの成果は、夢空間松代のまちと心を育てる会によって『庭園都市まつしろ:新しい松代が見えてくる:武家屋敷の庭園と町屋」(平成26年10月9)という冊子にまとめられている。ぜひ手にとってお読みいただければと思う。

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