福川裕一
- 2020年3月14日
川越水村家住宅、取り壊しの危機
第42回全国町並みゼミで「保存に関する決議」を採択した水村家住宅が、今まさに取り壊しの危機にある。自治会、市民有志そして子孫の水村さんが動いているが、状況は厳しい。ここまでの経過を整理し、事態の打開へ向けての一助としたい。 川越の蔵造りの町並みは、1893(明治26)年の大火ののちに再建されたものだ。この火事で、今は重要文化財になっている大沢家はじめ土蔵が焼けのこり、蔵造りで町を再建するきっかけになったと言われている。しかし、蔵造りではないが、火事にあわずに遺った町家がある。それが火事を免れた喜多町(江戸時代の町名は北町)の水村家住宅である。この経過からもわかるように、同住宅は、建設時期が江戸中期にさかのぼると推定され、川越のみならず関東でも最古級の町家である。喜多町会館を起点にした町歩きに参加した人は、ご覧になったはずだ。 昨年(2019)12月3日、取り壊されそうだという情報を得て、日本建築学会関東支部は、川越市長ほかあてに「水村家住宅主屋の保存活用に関する要望書」を提出した。写真と図面を添え、建物の学術的価値を訴えた要望書である。 これに対


福川裕一
- 2020年3月14日
第4回峯山賞は、谷根千のみなさんへ
第4回峯山賞は、東京の谷中・根津・千駄木で26年にわたり地域雑誌『谷根千』を発行し、東京の歴史的環境の保全にも多くの功績のあった谷根千工房の、森まゆみさん、仰木ひろ子さん、山崎範子さんの3人が受賞。第42回全国町並みゼミ川越大会二日目の閉会式で、記念品と副賞が贈呈された。同誌は10年前に終刊したが、地域活動は今も続いている。 下手な解説より、当日の3人のスピーチが素晴らしかったので、それを再録しよう。 受賞理由 記念品と副賞の贈呈の後、拍手の中、まず森まゆみさんが受賞のあいさつの口火を切った。 年の頃だけは経てきて、私たちも20代で活動を始めて、もうみんな60代になりました。36、7年ずっと、地域の住んでいる方の声ですとかを聞取りながら、それを記録にしてきました。これは宮本常一さんが言ってることですけど、やっぱり「記録されないものは記憶されない」ということがあります。ちょっとしたことでも、あとになると忘れてしまうようなことを必ず聴きとるようにということでずっとやってきた。それと一緒に保全とか再生とかをやってきました。 峯山さんには、私たち最初に始

