• 福川裕一

ベトナムの町並み保存の女性リーダー8名が訪日、各地で日本の女性リーダーと交流


「世界遺産になろうという町や村から来ているのに、もっと町並みが遺っているところへ行かなくていいの?」

「いや、これが日本の現実だ。」

「ふーん。」

「だいいち、今回は女性リーダーの交流だろ?、京都で小島さんと丹羽さんに会わずにどうする。」

「はい、ごもっとも。でもねぇ・・・」

 去る9月13日、ベトナムの町並み保存の女性リーダーたちを京都の中心・明倫学区へ案内したとき、主催者の友田博通昭和女子大学教授と案内人の私との間で繰り返された会話である。このあと、奈良町、今井と進むにつれ、彼の不満はおさまっていったようだが、ゲストの皆さんは、京都のまちなかをすっかり楽しんでいるようだった。町家の前へ来ると立ち止まり、膏薬辻子を大手を振って楽しそうに歩き、釜座の町家では中庭にすっかり魅了された。私も十分に楽しんだ。実は、私の場合は祇園新橋や産寧坂の重伝建地区よりこちらの方に京都の魅力を感じてしまうのだ。もちろん、ビル化が進む現状を肯定するわけではないが。

 町歩きの後、小島冨佐江さん宅に上がり込みお話をうかがった。小島さんの「こんなに苦労しながらも、なぜ古い建物を大切にしているのか」「京都のように無茶苦茶にならないで」というお話に、彼女たちはビビッドに反応した。

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 このツアーは、昭和女子大学の100周年プロジェクトのひとつで、ベトナムで町並み保存に取り組む地区から女性リーダーに来てもらい、日本の町並み運動の女性リーダーと交流するという企画である。「グローバルプレイヤーとしての女性:持続可能な社会環境に関わる女性の役割」というすごいタイトルがついている。最初は日本のリーダーたちにもベトナムを訪問してもらう計画だったが、予算が獲得できず片側通行となった。来日したのは、ハノイ近郊のドンラン村から5人、メコンデルタのカイベーから1人、ホイアンから1人、ベトナム文化庁から2人(うち1名は男性)。リーダーをつとめるはずだったハノイ国家大学のファン・ハイ・リン先生は、ご主人が病気で来れなくなった。皆さんに紹介して、今後ベトナムと交流していただく窓口にと思ったのだが残念だった。代わりに越日大学OBのグエン・クアン・ジェ君が通訳をつとめた。

 実行にあたって、全国町並み保存連盟の女性リーダーの方々には一方ならぬお世話になった。町並み連盟以外の方々も含めてご紹介すると、訪問順に、京都町家再生研究会の小島富佐江さん、丹羽結花さん、惣司めぐみさん、奈良まちづくりセンターの黒田睦子さん、今井町保存会・称念寺住職の今井慶子さんと若林会長の奥さまとお友だち、松阪の蔵宿うつくしやの東村佳子さん、NPOたいとう歴史都市研究会の椎原晶子さん、日本橋の水戸部孝子さん。(すみませんが、男性は省略させていただきます)

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 奈良では、黒田さんが、松代ゼミの峯山賞授賞式の時のように入念に原稿を用意され、奈良まちづくりセンターという市民活動が果たして来た役割についてお話しいただいた。同センターは、地域の枠を超え、今や国際交流に力を注いでいる。

 今井では、称念寺で修復工事中の本堂を見せていただき、庫裏で茶道の接待を受け、お話をうかがった。今井慶子さんのご尊父・今井博道さんは早くから町並み保存を説き、妻籠、有松とともに町並み連盟を創設した人である。慶子さんは、そのことに触れつつ、今井の保存運動における自分の立ち位置について、率直にお話をされた。住民合意という同様の課題を抱える彼女たちは、すっかり共感して聞き入った。夜は、若林さんの奥さまとお仲間の手料理でもりあがった。その上、ご主人の病気で泊まれなくなった嘉雲亭に代わって宿を提供していただいた。

 15日午後、松阪駅で市長の出迎えを受けた。ホイアンには松阪出身の角屋七郎兵衛の墓が遺り、松阪の人々もベトナムを訪れる交流が続いている。その夜は、女性陣は蔵宿うつくしやに宿泊、10年ほど前から民泊が始まっているドンラン村の人々には、興味深かったはずだ。

 東京では、谷根千と日本橋を訪問した。まず、市村邸で椎原さんからお話をうかがった。谷根千の歴史から、伝統的建物を活用した最近のプロジェクト、そして東京に文化資源区を設定し谷根千を伝建地区へという最近の主張まで、コッテリとお話をうかがった。昼食は芸大の学食キャッスル食堂。その後町をめぐった。翌18日は再活性化が進む日本橋へ。水戸部孝子さんの導きで老舗をめぐり、お女将さんたちと交流した。

 最終日の19日、昭和女子大で総括集会。午前9時という時間にもかかわらず、文化庁はじめ多くの方にご参加いただき、幕を閉じた。「みんなすばらしかったけど、あえて一人だけあげると今井慶子さんがすごかった」そうです。

 このプロジェクトでは、全国町並み保存連盟の実に多くの方々のご協力をいただきました。連盟の存在の大きさを改めて認識しました。

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ツアーへの参加者が一番多かったドンラム村については、ココから資料が入手できます。ご興味がある方はご覧ください。訪問される場合は必読・必携です。また、主催者のホームページの記事はココです。

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