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  • 福川裕一

HUL連続シンポジウム第3回は、歴史的市街地(HUL)のほとんどが重伝建地区外の京都をケースに4月18日に開催します

更新日:2021年4月6日

2月21日(日)に開催された「HUL連続シンポジュウム:第2回倉敷の都市景観の未来を創る新しい枠組を考えるシンポジュウム」には、多くの方に参加いただきありがとうございました。倉敷、川越、八女から、それぞれの都市では、重伝建地区は歴史的都市環境(HUL)の中でどのような位置を占めているのか、重伝建地区外ではどのような歴史的環境を保全するためにどのような手立てがとられているのか、そして現状の課題は何か、などの報告をいただき、議論を交わしました。短い時間で、どうすべきかまでを描き出すことはできませんでしたが、問題意識や課題の共有はできたと思います。この結果を踏まえて、次回は、歴史的な市街地のほとんどが重伝建地区外で、それゆえにさまざまな取り組みが行われている京都を取り上げ、さらに理解を深めたいと思います。発表は、京町家再生研究会の丹羽結花さんにお願いしています。どうぞ、ご参加ください。詳細は、決まり次第お知らせします。なお、3回目からは全国町並み保存連盟が主催します。倉敷市ならびに倉敷のみなさん、2回にわたりシンポジウムを開催していただきありがとうございました。

 この間、奈良で、歴史まちづくり法の歴史的風致形成建造物の制度を柔軟に運営し、町家の保存を図るという方法が実施されているというニュースが入ってきました。また、城下町全体を重要文化的景観として、さまざまな手立てを尽くそうとしている金沢も参考にしたいところです。議論の行方によっては第4回も開催したいと思います。

 写真は、倉敷の重伝建地区周辺で、伝統町家・高層ビル・駐車場が混じり合う地区が広がる一方、伝統的な建物がまとまって遺る「こまちなみ」も随所に見られます。

 以下、2回目が終わった時点で私が考えたことのメモを付します:


 1. わが国には、HULをカバーする歴史まちづくり法が存在する。ただし、この制度に基づく風致維持向上計画は、プロジェクトのプログラムとしての性格が強く、点在する歴史的な建物等を保存していくシステムとしては十分でない。プロジェクトも、川越の例に見るように、しっかりした市民の関心がないと安易に流れていく。とはいえ、都市を歴史的な文脈で一体として捉え(HULを法律的に同定し)、その中で事業を組み立てるという点では画期的な制度である。当面は、景観法などとの併用で不十分なところを補っていくとともに、本格的なHUL法へ再編成していくことが望まれる。

 同法を活用していない倉敷と八女は、その導入を図るとともに、このような弱点を見極めた上で、その枠組みに安住することなく、創意工夫を加え、実質的にHUL勧告を実現し、制度のバージョンアップを国へ求めていくことが望まれる。


 2. 歴史まちづくり法のHUL法としての弱点のひとつは、建物の取り壊しを止める力が弱いことである。歴史的風致形成建造物を指定できることになっているが、川越の例で言うと、景観重要建築物、登録文化財、市指定文化財をそのままリストアップしている(そうすることで街なみ環境整備事業を活用できるようになる)。対象は、どうしても単体として存在感のある建物に限定され、数も自治体の意欲に依存し限られがちである。

 対して、重伝建地区では、歴史的な建物は原則として全て特定物件に指定され現状変更には許可が必要となる。本来の意味での登録制度が実行されている(実際は、所有者の同意を前提とする実務が行われているので伝統的な建物すべてが特定物件になっているわけではない)。この重伝建地区のシステムをHUL全体へ拡大することが理想である。しかし、それが現実的でないとすれば、重伝建地区をより柔軟な制度として運用することが解決策になるのではないか 。たとえば、HULの中にさまざまな規模の伝建地区(たとえばミニ伝建=こまちなみ)を展開する、あるいはある程度の新しい建物との混じり合いを許容していく、などである。重要なのは、建物が残っているかどうかよりも、まず一定の文脈のもとで意味のある範囲(=HUL)を決め、その文脈の中で作られてきた町並みや建物、その他の文化財を保存していくという考え方へ転換することである。このように考えれば、街道沿いを一体の文化的景観として捉え、伝建地区を連鎖的に設定していくというような応用もできるだろう。金沢が、城下町全体を重要文化的景観と定め、こまちなみはじめさまざまな施策を展開していることが参考になる。


 3. ユネスコ勧告は、HULをアイデンティファイし、上記の規制だけでなく政策の立案プロセスを含め総合的な取り組みを実行することを求めている(6つのステップ、4つのツールキットなど)。この勧告を、わたしたち町並み運動の「武器」として、これからも活用していく。

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